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日本初上演「アッシャー家の崩壊(コンサート形式による試補筆上演)」は魂の饗宴でした。

 

昨年暮れにKLASTYLING「暮らす+スタイリング」に掲載していただいた

青柳いづみこさん企画&ご出演の未完のオペラ「アッシャー家の崩壊」公演に行って参りました。

 

エドガー・アラン・ポー生誕210年 ドビュッシー 最後の夢「未完のオペラ アッシャー家の崩壊」(コンサート形式による試補筆上演)

お正月にミステリー小説はいかが?~青柳いづみこ先生×木山みづほラジオ…

 

 

 

舞台はハクジュホール。

休憩中にとった舞台の写真(アプリで絵画風に)です。

 

この日、このピアノは、何度も移動していました。

「スケッチ・ブックから」のピアノソロ、

歌曲「ビリティスの歌」、「眠れない夜」のピアノ伴奏、

交響詩「海」ではもう一台ピアノが登場して、6手による演奏、

そして「アッシャー家の崩壊」では、連弾によるオーケストラの役割。

それぞれのピアノセッティングの最中、ドリフ場面転換の曲が脳内で流れてしまった(笑)

 

全出演者おひとりおひとりの演奏家としてのグレードの高さももちろんですが、

難曲全てを弾かれ、トークまでもなさる青柳いづみこさん。

すごい集中力。圧巻でした。

あの後、夜公演でもう一度なさったのですよね。

信じられない!

 

演奏会後サイン会中の青柳いづみこさん

 

 

さて、プログラムについて。

 

☆まず、ふたつの歌曲。

文学を愛したドビュッシー、バックスクリーンに訳詞を映していただけたのが、嬉しかったです。

 

透明感溢れる盛田麻央さんの歌曲集「ビリティスの歌」。

3つの小曲で女性の恋の始まりと終わりが描かれていました。

その後、盛田さんはアデレーヌを歌われることもあってか、

勝手にアデレーヌの少女から大人に変わる頃の短編小説を読んだ気分になりました。

 

コンサート終了後の盛田麻央さんと青柳いづみこ先生。

 

根岸一郎さんの甘く切ない「眠れない夜』。

「彼女が入ってきた時、ぼくにはまるで嘘がスカートの足元を引き擦っているようだった。」

。。しびれます。

 

☆日本で初初演という6手による交響詩「海」。

未出版の楽譜をデュラン社の好意で複写されたというとても貴重な演奏。(パンフレットより)

青柳先生の「スケッチ・ブックより」ソロを聴いてすぐだったので、

ところどころに海のしずくを感じることができました。

それぞれの音の魅力はまったく違うのに、激しく、時に溶け合って

ドビュッシーの内なる海を表現。

オーケストラの演奏を聴くのともまた違う、ピアノの新しい可能性を感じました。

 

☆そして、いよいよ待ちに待ったドビュッシーの幻のオペラ「アッシャー家の崩壊」。

 

原作ではロデリックとマデリーヌが双子の兄妹の設定が、

ドビュッシー自らが作った台本では、年齢の離れた兄妹に。

そして、一番大きな点は、マデリーヌを埋葬するのが、

原作では兄のロデリックなのが、この作品ではアデリーヌを愛する医者であること。

 

ドビュッシーは、ロデリックに自分を投影させていたというのですから、

自ら愛する人に手を下すということはしたくなかったのでは。

根岸一郎さん演じる医者が、悪の部分を一気に背負います。

マドレーヌを愛するが故のロデリックへの憎しみの歌心が

舞台を闇の世界に。

 

友人役森田 学さんの温かいバスの声は、ロデリックの心に寄り添う優しさに溢れていました。

「騎士物語」の朗読の素晴らしさにもうっとり。

 

盛田さんのアデリーヌの姿が、衣装、声、立ち振る舞い全て魅惑的。

これは、男たちみな、恋に狂ってしまうよーと心の中で叫んでしまった。

 

そして松平 敬さんのロデリック。

壁石に向かって歌うアリアでの心の闇。

そして、刻々と恐怖に満ちていき、狂気に染まっていく姿。

本当に怖かった!そして、素晴らしかった!

 

演奏会後の松平 敬さん。逆光で後光がさしてるように。

 

プレトークでこの度、ドビュッシー未完の部分を補筆作曲なさった市川景之さんが、

台本をひたすた読み込んで、他の補筆なさった方の演奏は

全く聴かずに作り上げたとおっしゃってました。

ドビュッシーが文学から音楽を作ったその魂が、市川さんに引き継がれたのですね。

ひたひたと迫りくる恐怖、まるでヒッチコックの映画を観ているようでした。

「わざと明るい初期の頃のドビュッシーの作風でロデリックの歌うシーンを作った。」

とおっしゃっていましたが、これが本当に美しく、

闇の中の灯のように作品を照らしていたように思えます。

 

ラストの暗闇に真っ赤に染まった月を見ながら、しばし放心状態に。

 

今回は、私のおとなのピアノの生徒さんたちも一緒に観てらっしゃったのですが、

観終わった後のみなさんの興奮気味で

「舞台の世界に惹きづり込まれました。」

「すごい場にいれたのだと感動でいっぱい。」の一言、一言に

また感動をいただきました。

青柳いづみこさんが、東京オアシスのインタビュー中の音大生のメッセージの中で

「音楽は人と分かち合ってこそのもの」とおっしゃっていたことを思い出しました。

 

この世界を観客みなで共有できたのは、パンフレットからステージスクリーン、

プレトークまで作品をわかりやすくお伝えしたいという想いがあってからこそ。

プレトークで青柳さんが、各シーンの音楽モチーフについても

わかりやすくお話くださっていたので、より深く理解できたのだと思います。

 

日本を愛したドビュッシー。

100年後にその日本で、こんなにも素晴らしい魂の饗宴が行われていること、

どうぞ天に届きますように。

 

 

[ 日本初上演「アッシャー家の崩壊(コンサート形式による試補筆上... ]アート&ライブ&ブック, , 2019/01/13 23:34