あれができない これができない、
と 落ち込むのはもったいない
積み重ねてきたものは 何があっても奪われない
ー 舘野泉
これは先日もご紹介した館野泉さんの著書
「命の響」(集英社館)より
以前の記事はこちら→★★★
この本の中で館野さんは、右半身麻痺となった今は
弾くことができないけれど
「倒れるまでに身に着けたレパートリーが
現在の左手の演奏を支えている。」
と書かれています。
「目に見えないけれど、自分の中に蓄積され、
しっかり呼吸しているのがわかる。」と。
その左手で奏でる音楽を聴きたくて、先日、
館野泉さん79歳のバースデーコンサートに行ってきました。
最初のシャコンヌの一音を聴いた途端、
深く温かい音に体中が包まれて涙が溢れました。
館野さんといえば日本で初めてファンクラブのできた
クラシック演奏家だそうです。
おそらく人生の色んな節で音楽を共有なされたであろう
人生の大先輩の方々が慈しみ深い眼差しを
ステージに向けられていました。
美しく年を重ねられている草笛光子さんの朗読と
音楽のかけあいもとても粋でした。
わたしもあんな風にわくわく好奇心いっぱいで
年を重ねたい^^
80歳のバースデーコンサートも今から楽しみです♪
会場では、左手の文庫の募金箱が設置されていて、
ほんの少しだけですが寄付させていただいたら、
なんと!館野さんが撮影なさった
フィンランドの仕事部屋のお写真をいただき、
とても感激しました。
北欧の音楽家たちの音楽のこと、
もっと知りたい、伝えたいです。
左手の文庫→★★★
最後に<舘野泉 バースデー・コンサート2015 ~音楽と物語の世界>
プログラムを記しておきます。
バッハ / ブラームス:シャコンヌ
語りとピアノによる『白髪の恋の物語』☆
末吉保雄:土の歌・風の声(舘野泉に捧げる)
吉松隆:KENJI・・・宮澤賢治によせる ☆
オホーツク挽歌/銀河鉄道の夜より… 他
(舘野泉に捧げる/「舘野泉左手の文庫(募金)」助成作品)
☆ 語り:草笛 光子 演出:栗原崇
リサイタルへの思い
ここ数年、自分の誕生日である11月10日に
東京で自主公演をするのが慣例になっている。
それは自分の誕生日を祝うというよりは、音楽の道に導いてくれた
両親に対する挨拶や報告のようなものかもしれない。
いまはこんな音楽活動をしています、
こんな友達と新たな試みをしています、いかがでしょうか。
そんな挨拶をするのにヤマハホールはちょうどよい大きさだ。
しっかりした響きで美しさを伝え、緊張感も備えて無駄がない。
今年は草笛光子さんと一緒に吉松隆さんの新作
<KENJI>(宮澤賢治によせる)を演奏する。
6月に演奏したヴォーカル、チェロ、ピアノのトリオ版ではなく、
草笛さんと私の二人のためのヴァージョンだ。
それと、どんなものになるかはまだ分からないが
<白髪の恋の物語>をやってみたいと思っている。
年を重ねる喜び、悲しみ、辛さ、死と隣り合わせと感じる孤独、
しかしそこにある潔さ、面白さ、暖かくて悲しくて
素晴らしい今をやってみたいのだ。
私のソロでは末吉保雄の<土の歌・風の声>を演奏する。
現代日本の生んだピアノ音楽の傑作だと思っている。
そして、こうして並べてくると最初に置くのは
バッハーブラームスのシャコンヌ以外には考えられない。
舘野 泉